糖尿病とは

糖尿病は、膵臓から出るホルモン(インスリン)が不足して、血糖値が慢性的に高くなる病気です。50代以降の方に多く、日本では予備群も含めると約2,000万人と推計されています。
糖尿病の自覚症状には喉の渇き、水をよく飲む、尿の回数が増える、体重が減る、疲れやすくなるなどの症状がありますが、初期にはほぼ無症状で進行し、「サイレントキラー」とも呼ばれています。放置すると、失明、腎不全、心筋梗塞、脳卒中、足の切断など、命に関わるより重い病気(合併症)につながります。これらの合併症は早期からの血糖値のコントロールと定期的な検査によって、予防や進行の抑制や可能です。
糖尿病を診断するための検査には、空腹時血糖やHbA1c(過去1~2か月の血糖の平均)、75g経口ブドウ糖負荷試験などがあります。治療の基本は食事・運動・薬物療法になります。状態が安定していても、血糖コントロールや合併症の早期発見のために、少なくとも月1回の受診が推奨されています。
当院では糖尿病に関するご相談~診断・内服療法・インスリン療法を行っています。健康診断で血糖の異常を指摘された方、生活習慣が気になる方は、ぜひ早めにご相談ください。
以下のような症状があれば、一度ご受診ください
- 血糖値の異常や尿糖を指摘された
- 太ってきた
- 常に喉が渇き、ジュースなどをよく飲む
- 尿の回数が多く量が多い
- 尿が泡立つ
- 食べているのに体重が減っている
- 疲れやすい
- 視力低下
- 手足のしびれ
- 足のむくむ
- やけどや怪我の痛みを感じない
- 勃起障害(ED) 等
糖尿病の種類
糖尿病には主に4つのタイプがあります。「1型糖尿病(自己免疫によるインスリン不足)」、「2型糖尿病(生活習慣病や遺伝が関与)」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」と「妊娠糖尿病」があります。
1型糖尿病
「糖尿病=生活習慣病」と思われがちですが、1型糖尿病は食事や運動の影響ではなく、体の免疫反応が原因で起こる全く別のタイプの病気です。若い方に多いですが、大人になってから発症するケースもあります。膵臓からインスリンがほとんど出なくなり、注射でインスリンを補う治療が必須となります。体調の変化が急なことも多いため、継続的な医療のサポートが欠かせません。最近は、持続血糖測定器(CGM)やインスリンポンプなどの先進的な治療も普及し、より安定した生活が送れるようになっています。
2型糖尿病
2型糖尿病は日本人に最も多い糖尿病のタイプであり、全体の約9割を占めます。遺伝的な要因に加え、運動不足、食べすぎ、肥満などが影響するといわれています。2型糖尿病のある方は、インスリンの分泌不足やインスリンが効きにくくなることで、血糖値が慢性的に高くなります。初期は自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行し、合併症を引き起こして初めて気付かれるという事もあります。
血糖値を望ましい範囲に調整するためには、適切な食事療法や運動習慣が重要であり、病態の把握は検査値を中心に行われるため、定期的な通院を中断しないことが大切になります。
その他の特定の機序、疾患によるもの
糖尿病以外の病気(膵臓の病気、ホルモン異常など)や治療薬(ステロイドや免疫抑制剤など)が原因で糖尿病になることがあります。これらは原因が明確なことも多く、治療もその原因に応じて異なります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病にはまだ至っていない血糖値の上昇のことです。妊婦さんの約1割にみられます。放置すると、赤ちゃんの体重が増えすぎたり、分娩時の合併症、さらには将来の糖尿病発症リスクも高まります。多くの場合は出産後に改善しますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいと言われており、産後も定期的な血糖チェックが必要です。
糖尿病の合併症
全身の血管が長期間にわたり高血糖にさらされ続けることで、血管が傷つき様々な臓器に合併症がおきてしまいます。合併症は「細小血管障害」と「大血管障害」に分けられます。
三大合併症(細小血管障害)
1)糖尿病網膜症(失明の原因)
高血糖によって目の中にある網膜の血管が傷つき、出血や浮腫を起こす病気です。進行すると視力低下や失明に至ることもあり、日本では中途失明の主な原因の一つです。自覚症状がないまま進行することが多いため、糖尿病と診断されたら定期的な眼科受診が重要です。
2)糖尿病性腎症(人工透析の主因)
高血糖によって腎臓の細い血管が傷つき、老廃物をうまく排出できなくなる病気です。進行すると本来尿中に出てこないタンパクを認める様になり、やがて腎機能が低下し、最終的には人工透析(機械で血液の不要な成分を濾過し、人工的に尿を作る)が必要になることもあります。定期的に病院で透析を受ける必要があるため、日常生活に大きな影響が及びます。日本では糖尿病性腎症が透析導入の最多原因です。自覚症状が無いまま進行しますので、早期に発見するためには、定期的に腎機能を検査する必要があります。
3)糖尿病性神経障害(しびれや足の傷が治りにくくなる)
高血糖によって神経が傷つくことで起こり、最も早期から(糖尿病発症から5~10年といわれています)現れる合併症の一つです。手足のしびれや痛み、感覚の低下、足の傷に気づきにくくなるなどの症状があり、放置すると感染症の合併や壊疽(えそ)の原因になります。また、立ちくらみや胃腸の不調など自律神経にも影響を及ぼすことがあります。
動脈硬化症(大血管障害)
心臓や脳などの大きな血管の動脈硬化が進行し、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や脳梗塞、足の血流障害(末梢動脈病変、足病変)を引き起こします。
糖尿病のある方は、ない方に比べて心筋梗塞や脳卒中のリスクが2〜4倍とされており、初めての発作で命を落とすことも少なくありません。糖尿病の他に、高血圧や脂質異常症、肥満や喫煙、加齢も動脈硬化症につながります。